由緒と天皇家との関わり

柳谷観音について

夢のお告げ

柳谷観音は806年(大同元年)平安時代、清水寺を開山された第一世延鎮僧都により開創されました。 延鎮僧都は 『西山にて生身の観音様に出会うことができる』 という夢のお告げにより、清水寺からこの西山に入り、柳(楊)生い茂る渓谷の岩上に生身の観音様を見つけられました。 その観音様が、古来より眼病に霊験あらたかな十一面千手千眼観世音菩薩だったということです。
十一面千手千眼観世音菩薩は十一の顔と千の手。更にその千の手のひとつひとつに眼を持つとされています。 あらゆる方向のあらゆる人を見失うことなく救済できる力を持った、とても徳の高い観音様です。 延鎮僧都は喜び、その場所に堂宇を建て観音様をお祀りし、『楊谷寺』としました。 楊谷寺は『柳谷観音』として親しまれ、眼病平癒の祈願所として天皇家公家の方々を初め、人々の厚い信仰により支えられてきました。 その信仰と伝統は1200年経った今も変わらずここに息づいています。
また、柳谷観音・楊谷寺は「京都・西山三山(楊谷寺、善峯寺、光明寺)」のひとつに数えられております。
>>祈りと信仰のみち・京都西山三山

柳谷観音 立願山楊谷寺

新西国霊場 第十七番礼所
洛西観音霊場 第十番礼所

〒617-0855
京都府長岡京市浄土谷堂ノ谷2
TEL:075-956-0017 FAX:075-957-0615

眼病平癒の祈祷寺として

弘法大師の独鈷水

延鎮僧都は夢のお告げ通り生身の観音様を見つけ楊谷寺を開創後、清水寺に帰らなければならなくなりました。 その後、811 年、乙訓寺の別当(総括管理の僧官)を命じられた空海は当山を参詣されていました。
ある時、お堂のそばの溜まり水で親ザルが目のつぶれた子ザルの眼を一心不乱に洗っている姿を見て、空海が17 日間の祈祷を施したところ、子ザルの眼が開きました。 空海はこの不思議な水にさらに祈祷を施し、眼病に悩む人々のために霊水にしたという伝説があります。 その霊水が、独鈷水(おこうずい)です。その由来から当山第二世は弘法大師と仰ぎます。
古くより、眼病に悩む人々が当山で籠ってお経を唱えたり、数珠繰りやご祈祷、独鈷水(おこうずい)を飲んだりして病気を治癒されてきました。
その人々が郷里に帰り、治ったことをお話になる事で更に信仰が広がり皆様から『やなぎださん』と呼ばれ親しまれてきました。現在でも全国から来られる多くの参拝でにぎわっています。
また、今では眼(がん)という言葉にかけてがん封じのご祈祷をされる方も増え、実際に命を救われた方々のお参りも絶えません。

天皇家ともつながりの深い縁

歴代天皇も祈りを捧げたご利益寺

当山には古くから天皇家のご参拝もあり関係も深かったので、寺を囲む線には天皇家ゆかりの寺 の証として、寺格の一番高い5 本線が入っております。
豊臣秀吉の側室、淀殿は当山の観音様を信仰し、淀城におられる時毎日当山の水でお顔を洗って いたと言われています。
江戸時代には112 代霊元天皇が眼病を治癒されたことをきっかけに明治に至るまで天皇家に独鈷水を献上していたと伝えられています。
113 代東山天皇は皇妃新崇賢門院(四条の局)と共に子宝・安産祈願をされ無事皇子を授かりましたが、皇子が9 歳の時に崩御されたので、後に114 代中御門天皇となり追善菩薩として奥之院に観音様を作られました。
そのような由縁から当山には数々の天皇家より下賜されたもの品物が納められています。
淀殿よりご寄進の厨子は徳川の世になった際に本堂より移され阿弥陀堂に、天皇家の下賜物は寺宝庫に納められ、あじさい祭りの際に展示を行っております。

古来より続く祈りの形

観音様と神の宿る霊場

日本古来の神道と、飛鳥時代に伝来したとされる仏教。 平安時代に入ると神と仏を同格とし共に崇拝するというのが一般的でしたが、明治時代の神仏分離令により神仏習合は鎮圧されていきました。 そんな中で柳谷観音は、古くから人々が行ってきたの祈りの形を守り続けた、全国でも数少ない寺院の一つです。
本堂、奥之院の観音様のお堂のそばに観音様をお守りする神様の鎮守社があります。 広く深い慈愛に満ちた観音様と、守護神として、自然崇拝・精霊崇拝・先祖崇拝など自然の力を司る神様がおられる柳谷観音は、霊験あらたかで、本堂は新西国霊場第十七番に、奥之院は洛西観音霊場第十番に指定されております。

江戸時代より詠われる柳谷信徒勤行式

当山に祀られている神仏に、感謝と祈りを捧げ、ご利益をいただきます。鐘を叩き、大数珠を繰りながら百万遍念仏を唱えます。 当山の御詠歌は一般的な鈴(りん)で詠われる御詠歌とは違い、僧侶が使用する拍子木で一定のリズムを刻みながら詠うと言う大変珍しい独特な御詠歌で、「景清」という落語にも登場します。また、ラフカディオハーンと同じく日本を世界に紹介したポルトガル人モラエスの『日本夜話』に当時の当山の数珠くりが紹介されています。美しいメロディーに感動して涙がとまらなかったそうです。
通常の百万遍大数珠繰りは、毎月17日にあります。 ※▶の再生ボタンをクリックして頂けますと、音声をお聞きになれます。再生まで少し数秒お時間がかかります。

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