2016/5 寺宝展 島田墨仙の「美少年」

日付:
2016年06月02日
カテゴリー:

700

5月度は東京国立近代美術館にも作品が所蔵されている島田墨仙の「美少年」を展示いたしました。

昭和7年の東京會に出品された代表的な作品です。

美術館に収蔵されている作家を中心に公開している「寺宝公開」。5月は東京国立近代美術館や福井県立美術館、東京芸術大学大学美術館にも収蔵されている明治から昭和初期に活躍した日本画家・島田墨仙。墨仙は橋本雅邦の弟子で、特に歴史人物画に優品を残している。

 柳谷観音主席学芸員の上坂美江氏が今回の公開にあたり、同作品をあらためて調査したところ、墨仙65歳、昭和7年の作品で、同年に東京會(秋)に出品されたものであることが分かった。
 日本古来の肖像画の技法の研究に努めた墨仙。大正の終わりから 昭和4年の大病を経て昭和10年前後にかけて、細く柔らかな筆致で、情緒豊かに描かれ、それらはあたかも作家本人が画中で遊ぶかのようだと評された。

 同作に描かれているのは8世紀に中国の詩人・杜甫の「飲中八仙歌」の8人の酒豪の1人の雀宗之。宗之は「飲中八仙歌」で「宗之瀟灑美少年 舉觴白眼望青天 皎如玉樹臨風前(美少年が杯を手に青空に白目をむけば、その輝かしさは美しい木が風に揺られるかのよう)」と書かれており、作品からもそのようすが感じ取れる。

 同作品は墨仙芸術の円熟期のもので、詩情豊かな味わい深く、温柔な表情と華美ではない気格高い濃淡な表現に癒される。子どもがいなかった墨仙は意に満たぬ作品を世に遺すことのないように、毎年作品の焼却を 重ねてきた。しかも墨仙の作品は活動拠点であった福井、福島、東京の3か所を中心に遺されたものの、戦災に遭い、その多くは失われたといわれている。

 また墨仙はタレントで料理研究家の平野レミ氏の祖父、日本美術史家のヘンリイ・パイク・ブイ氏を指導。その関係で平野レミ氏は墨仙の作品いくつか収蔵している。
 ぜひ、そんな寺宝をご覧頂いて、ぜひタイムスリップしたような時の流れを感じてください。